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心理療法

「心理のリハビリとは何をするのだろう?」と思われる方も多いことでしょう。一般に心理療法と言われると、心理的な問題に対するカウンセリングをイメージします。リハビリテーション分野での心理療法では、病気や事故にあった患者さんの落ち込みや悩みに対する心理カウンセリングだけではなく、高次脳機能障害についての評価・訓練を行います。
当院では臨床心理士が、脳損傷(脳血管障害、頭部外傷、脳炎、その他)の患者さんや身体障害の患者さんに対応しています。具体的には以下の通りです。

診療内容

リハビリテーション分野における心理療法

1. 面接・カウンセリング

突然、病気や事故にあった場合、自分がどんな精神状態になるか想像できる人はどのくらいいるでしょうか。心理では、患者さんの気持ちの落ち込み、不安、抑うつなどに対して、面接、カウンセリングを行っています。

2. 知的刺激訓練

脳卒中や頭部外傷など、脳に何らかのダメージを受けた場合、病気になる前までの能力より低下することがあります。例えば、理解力、判断力、記憶力、注意力、集中力などに低下が起こりえます。このような能力の障害を高次脳機能障害といいます。心理では、患者さんの知的能力(高次脳機能)の中でどの能力が低下しているのかを検査し、患者さんの状態に合わせた個別プログラムを作成し訓練を行っています。

脳卒中後の精神症状

脳卒中後には、精神的にもいろいろな症状が起こることがあります。
例えば、抑うつ不安感情面の動揺意欲低下記憶障害病識不十分妄想などが挙げられます。

抑うつ

脳卒中の後遺症としての抑うつ状態は、しばしば見られる心理的問題の一つです。脳卒中発作後の回復期に生ずる一過性の症状であるもの、脳卒中によって誘発されたようなもの、自己に生じた事態の大きさ(身体機能障害)に落胆して起こるものの三種類に大別されます。症状の特徴として、自分のまわりのことへの関心の低さ、意欲低下、活動性が乏しく、自分の苦痛を訴えることが少なく引きこもりがちになる、などがあります。リハビリ訓練に対しても消極的で努力を示さない態度が見られます。全体に口数は乏しく、反応が遅く、まわりから関わらないと終日寝て過ごすといった傾向が見られます。
言語的・非言語的サポートや環境調整を行い、周囲から肯定的なサポートをすることが重要とされています。

不安

ある日突然、歩けない、身動きできない、うまく話せないという状態におかれたとき、なかなかそのような状況に適応できるわけではありません。今の状態は夢であって欲しいと願うこともあるかもしれません。そこでまずは現実の世界を否定しようとします。しかし、しばらくすると自分の現実と向き合わなくてはならなくなり、将来への不安(どうなるのだろう、仕事は?家族は?自分のこれからは?など)から夜眠れなくなったり、気持ちが不安定になることがあります。家族やスタッフは患者さんの気持ちをまず受けとめてあげることが大切です。

感情面の動揺

にこにこしているかと思うと、ささいなことで急に怒りだしたり、めそめそしたりするといった感情面の動揺や感情失禁が、脳の損傷部位によっては器質的な要因で起こります。会話の一部分や気になっていることに過剰に反応することで起こります。そのような感情表現は本来的な性格が強まっていることが多いですが、本来の人格や礼節は保たれており、対人関係で特に問題を起こすことは少ないようです。家族やスタッフが患者さんの気になることを刺激しないなど、対応に配慮することが大切です。

意欲低下

自発性や積極性が低下し、まわりへの関心が乏しく無欲状態になることがあります。家族やスタッフに依存的になり、周囲からの働きかけがないと自分からは動こうとしません。自分でできることも、人に頼むことが多くなり、自分でするように促すといらいらしたり、怒りっぽくなる人もいます。身体機能訓練では、意欲の低下している患者さんは訓練効果が上がりにくいことがあります。
患者さんご本人のできることに合わせて、ご自身でできるようにサポートしていくことが大切です。

記憶障害

記憶には、今見たり聞いたりしたことを覚えている力(記銘力)と昔のことを思い出す力(想起力)があります。脳卒中の方の多くは記憶力の低下が顕著です。今いる場所や今日は何年、何月、何日、何曜日か正確に答えられないこともあります。病気になってから会った人や病院のスタッフなどの名前が覚えられない人もいます。病棟での生活場面では、看護師さんから「今から何々へ行って下さい」と言われたことは覚えていて行くことができても、「何々へ行った後は何々へ行って下さい」など、指示内容が複雑になるとつぎの指示を忘れてしまうことがあります。顔を見れば会ったことは覚えていても話した内容は思い出せないことなどがあります。
メモや手帳を活用したり、同じ行動を繰り返して身に付けてもらうなどの工夫が必要になります。

病識不十分

脳に障害を受けた場合、障害を自分の目で確かめることができません。脳卒中の後遺症である身体障害を自分の目で見て障害の重さを感じとることはできますが、目で見えない領域(知的機能、認知機能)は自覚できないことが多いのです。記憶が低下している場合は、家族に何度も同じことを聞くので家族は記憶力が落ちていることに気づけるのですが、患者さん自身は「私はどこも悪くないと思っていますが、家族が変だと言うもので」など、自分の病態への認識ができにくいことがあります。仕事のことが気になっている患者さんの場合、今すぐにでも仕事に戻りたいと言い出すこともあります。できないことや低下している能力に気づいてもらうよう、言葉で状態を伝えたり患者さんの行動の結果をご本人に示していきます。そして、気をつけようと意識できるようになると少しずつ回復していることになります。

妄想

脳卒中後に幻覚、妄想状態が起こることもあります。患者さんの中には、「自分が入院中に夫あるいは妻が浮気をしている」などの嫉妬妄想や、家族から疎外されていると感じている場合は、「息子あるいは嫁、娘が自分の悪口を言っている」「嫁は自分に何々をくれない」などの被害妄想、また、知覚異常として「虫が背中を這っている」「くもがお腹にいる」などの訴えが聞かれる場合があります。亡くなった方がまだ生きていて話をしたと話されることもあります。
患者さんの状況を理解し、ご本人のペースを尊重した関わりをすることで、社会的な孤立を防ぎ、患者さんご自身の認識を深めることが、状態を改善すると考えられています。